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「そっか…」
部屋を見回すと二人の姿が無い。
「司と月香さん…帰ったの?」
玲一の問いに織は笑いながら首を横に振った。
「今、台所にいるよ。騒がせたお詫びに夕食作るって。あの人達…かなり変だけど良い人達だよね」
織の言葉に苦笑する玲一。
「ああ…ほんっと変な奴等だけど…」
恋愛とは違った意味でやっぱり「好き」なんだろうな。
玲一はそう思った。
その「好き」と恋愛感情としての「好き」が重なる時が果たして来るのだろうか?
その答えはまだ遠い先の話かもしれない。
「はう~!美味しい~!久々に司の料理が食べられるのね~!」
味見して歓喜の表情を浮かべる月香。
「ふう…月香も少しは手伝いなさい?お粥位は作れるでしょ?」
手際良く食材を切りながら司が言う。
「私は食べる方専門がいいよう。司の邪魔しちゃ悪いし」
「…まあいいけどね」
そう言って出汁の味見をする司。
少し間を置いて、月香がポツリと呟いた。
「………もう少し玲一君とベタベタした方が良かったかなあ?」
「…どうしてそう思うの?」
「それで織さんが自分の気持ちに素直になれば、玲一君も素直になれるんじゃないかと思って。私の見当違いかな?」
月香の言葉に司は複雑な笑みを浮かべた。
「玲一と織さんが気にするのはそこじゃないの。もし…互いの気持ちに素直になる時が来たとして…ワタシ達が出来る事は多分二つだけなのよ。消すか…消し去るか…」
そう言った後の司の表情はとても哀しそうだった。
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