第一話「へたれ、プルツー」

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「ね。」  コロニー港内に設置された、中規模の本屋。  真っ白なシャツに赤いネクタイを締め、ネクタイと同じ色をベースにしたチェックのパンツを履いたルチーナは、ここでシャトルが出るまでに少し時間があったのでプルツーの為に本を選んでやっていた。  本を選びながら呼びかけるルチーナに、プルツーが横でモビルスーツ関係の雑誌をあさりながら反応する。  ちなみに彼女の格好は少し大きめの真っ赤な半袖のパーカーと、黒いルーズのハーフパンツ、そして赤いバッシュというストリート系のものだった。 「何だよ、、、、。」 「現代文のテスト、何であんな答え書いたの?」 プルツーのぶっきらぼうな返事に、ルチーナが本に視線を向けたまま優しく尋ねる。  正直、あれが本気で書いたように思えなかった。まあ、先生に喧嘩をうってるのかなぁ。、、、とも思えたが。  プルツーがそのまま答える。 「あの問題が、気に入らなかった。」  えっ。問題が気に入らない、、、、?  意味がよく分からなかった。 ルチーナがようやくプルツーに視線を向けて尋ねる。 「どういう事?」 「あの問題の目的は、物語の登場人物の心境を理解しろという物だっただろう? それが気に入らなかった。」 「、、、、、、、、、、、、?」  う、うん。まだ意味が分からない。 ルチーナが苦笑すると、プルツーが最終的な答えを言った。 「ルチーナ。大切なのは、相手を理解する事じゃないんだろう。」  、、、、だんだろう。って、私そんなセリフ言ったかな? 言った記憶がなかった。  さらに意味も相変わらず分からなかったのだが、とりあえずセリフが格好良かったので「多分正しいんだよね。」と自分に言い聞かせておいた。  ルチーナが少し安心した表情で口を開く。 「それじゃあ。別に答えが分からなかったってわけじゃないんだ。」 この言葉に、プルツーの方がピクリと震える。  勿論ルチーナはそれを見逃さなかった。プルツーに視線だけでなく、顔も向けて尋ねる。 「さっきのセリフって。ひょっとして、カッコつけた言い訳?」 プルツーの顔が辛そうに下がる。  どうやら、カッコつけた言い訳だったようだ。  ルチーナは昔友達が面白いと言っていた、『ドクターマンボウ。』という題の本に迷わずに手を伸ばしてあげた。
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