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「ね。」
コロニー港内に設置された、中規模の本屋。
真っ白なシャツに赤いネクタイを締め、ネクタイと同じ色をベースにしたチェックのパンツを履いたルチーナは、ここでシャトルが出るまでに少し時間があったのでプルツーの為に本を選んでやっていた。
本を選びながら呼びかけるルチーナに、プルツーが横でモビルスーツ関係の雑誌をあさりながら反応する。
ちなみに彼女の格好は少し大きめの真っ赤な半袖のパーカーと、黒いルーズのハーフパンツ、そして赤いバッシュというストリート系のものだった。
「何だよ、、、、。」
「現代文のテスト、何であんな答え書いたの?」
プルツーのぶっきらぼうな返事に、ルチーナが本に視線を向けたまま優しく尋ねる。
正直、あれが本気で書いたように思えなかった。まあ、先生に喧嘩をうってるのかなぁ。、、、とも思えたが。
プルツーがそのまま答える。
「あの問題が、気に入らなかった。」
えっ。問題が気に入らない、、、、?
意味がよく分からなかった。
ルチーナがようやくプルツーに視線を向けて尋ねる。
「どういう事?」
「あの問題の目的は、物語の登場人物の心境を理解しろという物だっただろう? それが気に入らなかった。」
「、、、、、、、、、、、、?」
う、うん。まだ意味が分からない。
ルチーナが苦笑すると、プルツーが最終的な答えを言った。
「ルチーナ。大切なのは、相手を理解する事じゃないんだろう。」
、、、、だんだろう。って、私そんなセリフ言ったかな?
言った記憶がなかった。
さらに意味も相変わらず分からなかったのだが、とりあえずセリフが格好良かったので「多分正しいんだよね。」と自分に言い聞かせておいた。
ルチーナが少し安心した表情で口を開く。
「それじゃあ。別に答えが分からなかったってわけじゃないんだ。」
この言葉に、プルツーの方がピクリと震える。
勿論ルチーナはそれを見逃さなかった。プルツーに視線だけでなく、顔も向けて尋ねる。
「さっきのセリフって。ひょっとして、カッコつけた言い訳?」
プルツーの顔が辛そうに下がる。
どうやら、カッコつけた言い訳だったようだ。
ルチーナは昔友達が面白いと言っていた、『ドクターマンボウ。』という題の本に迷わずに手を伸ばしてあげた。
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