第一話「へたれ、プルツー」

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「仕方ないだろう。ルチーナ。」 「仕方ないって?」 シャトル内、、、、。  つまらなそうに言葉を発するプルツーに、席に着いたルチーナがちょっとだけからかうかのように返事をする。  続けるプルツー。 「私は相手の気持ちを理解出来ないように育てられてきたんだ。戦闘で敵に同情したり、共感したりしたら本気で戦えないからさ。」 そして、小声でこう付け加える。 「、、、、まあ。殺気だけには敏感に反応できるように育てられてきたけど。」 ルチーナが「成る程ね。」と聞きながら口を開く。 「でも、そう育てられたからって。プルツーはちゃんと相手の気持ちを理解出来るじゃない。」 プルツーが、そこまで無神経な人間には思えなかった。  プルツーが席について答える。 「それはあくまでリアルワールドでの話だよ。私は先の理由で文系の本を読めと言われたことも、読もうと思ったことも無いからさ、、、、。」  ルチーナがそこから先の言葉を理解し、口を開く。 「文章上の人間の気持ちを理解するのが辛いの?」 「まあ、、、、。」 プルツーが渋々といった感じで頷く。  ルチーナは彼女の名を呼び、 「プルツー。」 ほんの少しだけ声を低くして、こう続けた。 「辛いからってさ、このままずっとCマイナスをとり続けるのは少し恥ずかしいかもしれないよ。  いくら他の成績が良くったってね。だから、、、、。」 ここまで言うと、バックの中からガサゴソと先程買ったドクターマンボウを取り出し、妹の手におく。 「辛くならないように、練習しよ。」 予想通りの展開だったのだろう。プルツーが目を点にして口を開く。 「やっぱり、読まなきゃ駄目か?」 「ダァメ。」 ルチーナが子供に言い聞かせるように言う。  まあ、とことん理数系のプルツーがすんなりと読んでくれるとは思っていなかったが、姉としてここは引くわけには行かなかった。  だから、、、、 「シャングリラコロニーに着くまでに、少しぐらい読んでおくこと。よろしいですか?」  この言葉にしばらく考え込んでいたプルツーだったが、『しかたない』といった感じでコクリと頷いた。 「分かった。読むよ。」 ルチーナは笑顔で「うん」と答えた。
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