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美奈子は念願の中学教師になり、希望に燃えていた。
今日からいよいよ先生と呼ばれるのだ。
どんな生徒と出会えるのだろう。
どんなに楽しいことがあるのだろう。
わくわくしていた。
ところが…校内に入ってその汚さに愕然とした。
教室や廊下は落書きだらけ、こんなに学校が荒れているとは思わなかった。
この地方の中学が非行で荒れていることはもちろん知っていた。
でもここは少なくとも中学生が勉強に来る場所ではない。
こんな環境の中で子どもたちはどんな学園生活を送っているのだろう。
美奈子には想像もできなかった。
職員室に座っていると窓から作業服を着て、煙草を上ポケットに入れた坊主頭の男の子が土足のままヒョイと入ってきた。
男の子は隣の先生の席に座り椅子を滑らせ、美奈子にくっついてきてじっと顔を見つめた。
「新しい先生ね?」
「うん。そうだけど…君は?」
「俺、修二。先生なかなかかわいいやん。
気に入ったで。
学校嫌いで来てないけど、先生がおるんなら、時々来てやるわ。」
その時
「こら、修二。何しよるんじゃ。」
と生徒指導の高橋先生の声がした。
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