抄太からのメール

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「この野菜炒め美味いー!」 「…姉ちゃん喜ぶよ、」 「……モヤシとほうれん草と蒟蒻かぁ。…またしよ、」 抄太の作ってくれたハヤシライスを食べた後、俺が持ってきたタッパーの中身を皿に入れて食べた。 本当なら、ハヤシライスと一緒に食べたら良かったんだけどね。 「…また、家に来たらいいよ」 「………でも、准のお父さんにバレたら…」 「大丈夫。帰り遅いし、」 「……でも、……。」 抄太は中学時代、俺の父さんとある約束をした。 結果…破ってるかたちになってるんだけど。 「……じゃあ今度、姉ちゃんも連れてきていい?」 「………紅姉ちゃん?…うん!……会いたい!」 姉ちゃんはまだ、心の片隅で抄太のことを好きでいる。 だから、会わせてあげたかった。 「紅姉ちゃんのご飯ー!楽しみだなぁ…!」 「……姉ちゃん喜ぶよ、」 俺に抄太を譲ってくれた姉ちゃんに、なにか恩返しをしたかったんだ。 だから…抄太の喜んでる顔を、はやく姉ちゃんに見せてあげたい。 「……ねぇ…准ッ、」 「…なに?」 ご飯を済ましてソファーに二人並んで座り、テレビを見る。 そんな時間もまた、至福の時だった。 「……准、髪切った?」 「…え、……うん」 抄太は元気そうにはしゃいだ後、俺の顔をまじまじと見つめた。 抄太に見つめられると、なんだか耐えられなくなる。 だってそんな可愛い顔で見られたら…。 「准いつもさー自分で切ってるよねー?…紅姉ちゃんに頼みなよー?」 抄太は俺の髪を撫でるようにして、触れてきた。 俺の髪が抄太の細い指に絡められ、するりと流れ落ちる。 「……姉ちゃんに頼んだら駄目だよ…」 「なんでぇ?…紅姉ちゃん上手いじゃん」 「姉ちゃん、抄太の髪型させようとするから…。伸ばさせるからさぁ、」 「あはは!切ってくんないんだ。てか俺とお揃い?…いーじゃん!」 実は抄太の髪、姉ちゃんが切ってたりする。 なにか口実をつけて、抄太と会わせてあげたいというのがきっかけだった。
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