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――――十五年後。
「その程度か!」
少女の声が闘技場に響いた。
多少低めで鼻についたような声には張りがあり、活発さを思わせる。
少女は自分の倍近くある大男を蹴り一発で、数メートル向こうの壁に激突させた。
その少女は少し大きめのだぼっとしたチャイナ服を身にまとい、赤みかかった黒髪をポニーテールにしてまとめている。
「朝飯前だね。もっと強い奴はいないのかよ。」
「この闘技場じゃあ、私が一番強い。もっと強いのと闘いたいなら、北極にいきなさい。」
先ほどの大男が少女に言う。見た目によらず、意外と礼儀正しいようだ。
「しかしなかなかだな、流石はチャンピオンの娘だ。血を受け継いでる。」
「あたしはチャンピオンのこと、あんま覚えてないんだけどね。
それより、北極に誰か強いのがいるのか?」
「強い、か……あれはもう強いという次元をこえてるよ。
彼は猛獣だ。そうだね、もしキミが狼なら、あれは獅子だ。」
獅子……そう聞いて、朱里は笑顔を見せる。
身体の奥底から、何かが燃えていた。鼓動が全身に響いているのが、よくわかる。
「行ってくるよ、北極に!」
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