神様の涙

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それは、夏の気配が近づいて来た、六月の終わり。 梅雨特有のじっとりとした空気が、肌を包む。 「暑い、」 さすがの蒸し暑さに、集中力も切れてきて、動かし続けていた手を止め、はぁ、と、溜め息を漏らせば、隣から、鬱陶しそうな視線が飛んで来る。 「もう、瑞穂-ミズホ-…暑いって言わないでよ!更に暑くなるでしょ!?」 「それは無い。ただ香織-カオリ-がそう感じるだけでしょう」 「不快感が増すのよ、馬鹿――――!」 キィッと、ハンカチでも噛みそうな勢いで私にそう叫んだ後、もう耐えられない!と、部屋から飛び出して行った。 「会長、良いんですか、副会長放っといて。」 「良いの。そろそろ緑くんも慣れて来たでしょ?香織の脱走」 そう、香織は脱走の常習犯なのだ。 この学校の生徒会役員は、選挙ではなく、純粋に成績で選ばれる。 一年生からは、入試で一番成績が良かった子が。 二年生からは、一年の時の成績が一番良かった子が。 三年生からは、今までの成績が一番良かった子が。 一年生は会計。 二年生は書記。 三年生は会長。 通常はその三人でやるのだが、私と香織はその例外で、一年生の時から二人で生徒会に所属している。 何故だか、毎年私と香織は同点一位なのだ。 順位も、私が一位を取ったと思ったら、次には香織が一位になり、香織が一位になったと思ったら、また私が一位になり、と、首位獲得回数まで同じものだから、“特例”として認められたのだ。 よって、今年の生徒会役員は、 一年生の笹川緑くんに、去年も生徒会役員だった二年生の工藤雅人-マサト-くん、そして、副会長の今泉香織に、会長の私、如月瑞穂の四人で構成されている。 香織は生徒会の仕事が面倒だから、と言ってよく彼氏の所へ逃げてしまう。 『生徒会長より副会長のが楽だしー』 なんて言ってあの馬鹿は、私に会長職を押し付けやがった。 ああ、今思い出しても腹が立つ。
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