戦火の予感

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「そのギルドに依頼して下さった方にも村人が心から感謝していたとお伝え下さい!」 「…わかった。伝えよう…。」 スコールがそう言うと村の長老は微笑んだ。 そして、立ち去ろうとすると何かにローブの裾を引っ張られた。 引っ張られた方に目を向けると、幼い少女が立っていた! 「助けてくれてありがとう!」 そう言って少女は、近くに咲いていた花で作った花束をスコールに渡した。 「あっありがとう…。」 スコールは照れた様に笑って花束を受け取った。 少女をよく見ると腕から血を流していた。 「その腕どうしたの?」 スコールが優しく聞くと、少女は舌を出しながら 「あのねぇ~逃げてる時に転んじゃったの!」 そう言って笑った。 「そうか…」 するとスコールは、傷ついた腕に手を当てた…すると少女の傷はあっという間に塞がり治ってしまった。 「あっありがとうございます。」 少女の母親が駆け寄ってきた。 少女は驚いた様子でスコールを見ると、無邪気な笑顔で言った。 「お兄ちゃんありがとう。お兄ちゃん、カッコイイね!私も大きく成ったら赤いローブ着て悪い魔物をやっつけるんだ!」 「そうか…」 スコールは優しく笑って、何をするのか自分の着ていたローブを脱いだ。 そして、指でローブを正方形になぞるとローブは、キレイに切れた。 ローブの正方形に切れた部分を手に取りローブの裏地に、指先で何を書くと 「これで、この子にローブを作って上げて下さい!」 そう言って赤い布を母親に渡した。 そして、少女の前にしゃがみ、頭を撫でながら 「もし大きくなって一人で出掛けられるくらいになったら、これをもって《大地の守護者》の本部に遊びにおいで。」 そう言った。 少女は意味はわからないようだが嬉しそうに笑っていた。 そして、立ち上がるとスコールは 「では、急ぎますのでこれで!」 そう大きな声で言うと一礼し 《転移!》 転移魔法を使って村を去った。 村人は皆、スコールの消えた場所に頭を下げていた。 すると、 「あ~!」 さっきの少女の母親が叫んだ。 「どうしたんだ?」 村人達が駆け寄ると、母親はローブに書かれた文字を指差した。 ローブには、 《この者 総帝が選びし者 これを見せられし者は 早急に総帝に取り次ぐべし 総帝 スコール・ミーティア》 と書かれていた。 「そうか…《正義の番人》様であったか…」 長老は目を細めてそう呟いた…。
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