戦火の予感

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ビックリした様子でスコールの顔を見ると慌てて担当だった医師を呼びにいった。 しばらくすると白髪の髭をたくわえた、恐らくこの病院でもそれなりの地位を持っているだろう男が現れた。 スコールは 「お手間をとらせてすいません。」 そう言って頭を下げた。 すると医師も答えた。 「イヤイヤ手間などととんでもない!《大地の守護者》様が出向いてくる等…余程の事なのでしょう?」 「そうなんですが…用件はもう聞いておられますか?」 「えぇ!大体は…さっき亡くなった患者の事だそうですね?」 「そうです!何か変わった事は無かったですか?」 スコールがそう聞くと医師は目を細めながら答えた。 「実は…おかしい事だらけでして…私も王宮に届け出ようか迷っていたところなんです。」 そういって医師は光景を思い浮かべるように目を閉じて更に話しを続けた。 「彼が運び込まれた時は正直もうダメかと思う程の重傷でした…とりあえず私達は、治癒魔法を三人の医師でかけました…。」 治癒魔法も特殊魔法の一種となるが…一応、全属性に基本となる魔法があり、医師達は他の攻撃魔法、補助魔法を捨て治癒魔法を究極までに学習し質を高め習得した、いわば治癒魔法のスペシャリストである。 その治癒魔法は、医属性と言ってもおかしくない程の特殊性を持っていて…一般人では到底理解出来ない難解な魔法を使いこなす。 ちなみに医師は無属性を持つ者が一般的に多い。 医師は話し続けた。 「すると…一般人とは思えない程、すぐに回復しました…異常といってもいいでしょう…彼は起き上がると処置室を飛び出してこのフロアで叫び始めたんです…《南にヒドラが現れてこの街を襲いに来るぞ!南の国の陰謀だ!》と」 「南の国の陰謀?」 スコールは顔色を変えずに聞いた。 「えぇ…男はその言葉を繰り返し叫びながら病院を出ていきました…病院の患者さん達は男の言葉を信じなかったようで…大した騒ぎにならなかったですが…まぁキチガイとでも思ったんでしょう…男は一時間くらいして、とても具合の悪そうな顔をして戻って来ると…病院の入り口で倒れました。急いで応急措置を行いましたが、暫く苦しむとすぐに亡くなりました…何やら呪詛のような者をかけられていたようでした…。」
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