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「貴女は、何者ですか」
「八雲 紫。それが私の名前よ。名前に同じ字を持つ同士仲良くしましょう」
紫と名乗った女性は右腕を伸ばす。すると信じられない事が起こった。
紫の目の前の空間が包丁で捌かれた魚の様に真っ二つに割れたのだ。その割れた空間を紫はスキマと呼んだ。
そのスキマの中に右腕を突っ込み中から真っ白の日傘を取り出し紫苑の荊を叩いた。
「え……ッ」
なんと日傘に叩かれた途端、荊は形を崩し空中に塵の様に四散した。紫がスキマに入り、顔だけを覗かせた。
「貴方は、自身の超能力を償いの力として見い出した。だが、本当に償いの力なのかしら?」
紫は意味深な言葉を投げ掛ける。それに紫苑は乗る。
「俺のこの超能力は兄がくれた償いの力と言い切る。俺はこの力で、兄の前でこの下らない生涯を終える!」
「兄がそれを望んでいるか確信もないのに?兄に、会って確かめたくないの?」
「……は?」
兄に会って確かめたくないのか、だと?
「貴女、そんな事が出来ると言うのですか?」
「今私が入っているスキマは幻想の地へ繋がる境界の出入口。貴方の兄は死に、幻想となって今『此方』にいるわ。紫苑、幻想の地へ行って、自分の超能力と自分の生涯の終え方、兄が自分に何を望んでいるのか……それを確かめてみない?」
「……」
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