始まりの鐘

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 一昔前、海底世界には十二の都市国家が点在していた。しかし、今なお機能している国家は、瑠璃王国と柘榴王国のみ。土地や金を求めて、小競り合いが絶えなかった他国は時と共に滅び、現在は、その多くが遺跡と化している。  瑠璃と柘榴は、共に小競り合いの時代を生き延びた強豪国である。当時、瑠璃は兵に優れ、柘榴は策に優れていた。  両国共に、積極的に戦を仕掛けては多くの小国をなぎ倒し、その力を吸収しながら、着実に国力を高めていった。そうしていざ、海底世界の都市国家が瑠璃と柘榴のみとなったとき、人々は誰もが、海底最強の二国が頂上決戦を始めるものと身構えていた。  しかし、その頃になって瑠璃の王座についたうら若い王マルセルは、突如戦を取り止めると宣言した。『真に国の発展を願うなら、王は国民と共に、血ではなく汗を流すべきである』とは、彼が残した著名な言葉である。  度重なる戦に疲労を隠せなかった瑠璃の国民たちは、こぞって若き革命家を支持した。一方で、力の行き場をなくした兵士たちは不満を募らせ、苛立ちを仲間内でぶつけ合うようになっていった。マルセル王は、戦を取り止めて浮いた国費を使い、定期的に武闘大会を開催する事で彼らの不満を解消する。
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