瑠璃の常

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 マルセル王の治世になってからというもの、瑠璃王国は至って平和だった。隣国柘榴との関係が多少ぎくしゃくしてはいるが、国民に直接被害が出るほどのものではない。  ほんの数十年前まで頻発していた戦が、急になくなった反動からか、道行く一般の国民には笑顔が溢れ、国全体が活気付いていた。  最も、ここ最近に限っては、瑠璃王国を賑わせているのが平和だけとは言い切れない。今や国民的ヒーローとなったマルセル王の一人息子であるケイオス王子――彼の五歳の誕生日が近付いているので、巷はその話題で持ちきりなのだ。  ケイオス王子も、父に負けず劣らず国民からは人気があった。その屈託のない愛くるしい笑顔や、素直で優しい性格はもちろんの事、幼いながらに頭の回転が非常に早い事も注目されていたのだ。  さらに彼は、転んで怪我をしようが、人前で怒られようが、決して泣き言を言わない気丈さも持ち合わせていた。だからこそ彼は、未来の国王として、瑠璃国民から大きな期待を寄せられている。  ケイオス自身も、自分の五歳の誕生日をとても楽しみにしていた。何より、普段はなかなか会えない両親が、自分の誕生日を祝ってくれる事が嬉しいのだ。
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