1.動き出す攻防戦?

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男はこちらに向かってくる魔物の目に狙いを定め、矢を放った。 ――ドッ……! 男の放った矢が正確に魔物の目を貫くと同時に、悲鳴が響く。 悲鳴が止み、倒れた魔物は確認するまでもなく事切れている。 「おぉ……すげぇな、モブ」 火翼は全くやる気のない、馬鹿にしているとしか思えない拍手をしながら男を見た。 やはり知らない顔だ。 「オレは……ッ、オレはモブじゃない! 鳩羽 十志だぁ……!」 見ているこちらが悲しくなるような悲愴感に溢れる表情をする男。 「え、名前あんの? モブのくせに」 火翼は非常に驚いて見せた。 「だから、オレはモブじゃないって!」 そう言って異議を唱えるモブ顔の男を、火翼はあっさりと無視している。 ……鳩羽、十志……。 内心で復唱しつつ、僅かに表情を曇らせる火翼。 ――十志……。 どこかで、その名前を聞いたことがあるような気がした。 ……まあ、同名の奴なんていくらでもいるだろうしな……。 火翼の脳裏を掠めるのは、引いて歩いた幼い手だ。 分かんねえ……、また今度考えよう。 人の名前を覚えるのが苦手な火翼だが、覚えると決めたことはすぐに覚えてしまう。 「魔術が使えるということは、お前は魔族なのか?」 教官がモブ顔――もとい、十志を見て言った。 十志は戸惑ったように目を泳がせる。 「オレは……」 「違ぇよ、教官。そいつは魔族じゃねぇっす。魔族なら魔物の生態について詳しいはずだから」
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