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「あー……、俺は無霧 火翼。んで、こっちがレイダス・アーウェイ教官……で、これがモブ」
「モブじゃねぇよ、鳩羽十志だってば」という声は無視。
夕霧――火翼はそう呼ぶことに決めた――は、十志を見て微かに眉根を寄せた。
「随分と変わった方がいらっしゃるようですね」
一方、十志は夕霧を見て照れたように笑った。
それを見た火翼は首を傾げる。
「何? 知り合いか、モブ?」
モブという言葉でピタリと十志の動きが止まる。
「火翼さん? だからオレ、モブじゃないって。知り合いじゃないし」
「ええ、私も彼は知りません」
そう言って頷く夕霧の眸は厳しい。
まるで知っている奴を見つけたのに中身が知らない奴だった、みたいな眸だ。
火翼はあえて聞かないが、
「……ですが、知っている魔力のようです。おかしいですね……、私の知っている方はまだ誰にも力を分け与えていないのですが」
夕霧は勝手に話し出す。
「まるで時代が違う方と会っているようですね」
十志の眉がピクリと跳ねたのを火翼は見た。
「時代が違う? それはオレが禁忌を犯してここにいるって言いたいのかよ、夕霧さん?」
十志の声が少し低くなり、夕霧を責めるような口調になった。
魔力を使って、時空を移動することは禁じられている。
禁忌を犯した場合、それが誰であれ死罪となる。
そして、魔術が使える者――主に魔族――を、証拠もなく、禁忌を犯したなどと疑うことは誰であっても許されはしない。
彼らのプライドはとてつもなく高く、余計な争いが生まれるのを防ぐためだ。
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