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「お前に来年はない。お前の成績じゃ、即刻退学なんだよ、馬鹿が」
火翼は驚く。
退学になるほどの成績とは……。
「俺って、もしかしてすっげぇ馬鹿?」
あー……、でも全教科50点だぜ? 中の中じゃねぇの?
……つか、50点で最下位ってみんなどれだけ勉強してんだよ……。
そう火翼はのんびり思った。
士官学校は甘くない。
赤点は50点だが、赤点を免れたとしても火翼のように最下位――274位の人とは25点差ある――で、それに加えてやる気のない奴は問答無用で斬り捨てられる。
「お前が卒業するには卒業試験でトップ20に入る必要があるが、馬鹿には無理だ。卒業試験は半端じゃない。難しいぞ」
やっと解放された火翼は教官に向かってパチリと片目を閉じる。
「そんなのカンニングでバッチリっす」
冗談で言ったつもりだったのだが、
「阿呆! そんなことをしたら首へし折って川に捨てるぞ!」
怒鳴る教官にうんざりする。
ガシッと腕を掴まれた火翼は、そのままずるずると教官に引きずられていく。
「またお会いしましょう」
引きずられていく火翼の耳に夕霧の声が届いた。
火翼はふっと口の端をつり上げる。
おー……これ楽だな……。
教官に引きずられることに反発するどころか、むしろ気に入ってしまった。
「またな、火翼さん!」
逃げないようにか、夕霧の腕が首に回された十志が手を振っているのを、火翼は情けないことに引きずられながら(火翼は幸せ)じっと見つめていたのだった――。
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