1.動き出す攻防戦?

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「お前に来年はない。お前の成績じゃ、即刻退学なんだよ、馬鹿が」 火翼は驚く。 退学になるほどの成績とは……。 「俺って、もしかしてすっげぇ馬鹿?」 あー……、でも全教科50点だぜ? 中の中じゃねぇの? ……つか、50点で最下位ってみんなどれだけ勉強してんだよ……。 そう火翼はのんびり思った。 士官学校は甘くない。 赤点は50点だが、赤点を免れたとしても火翼のように最下位――274位の人とは25点差ある――で、それに加えてやる気のない奴は問答無用で斬り捨てられる。 「お前が卒業するには卒業試験でトップ20に入る必要があるが、馬鹿には無理だ。卒業試験は半端じゃない。難しいぞ」 やっと解放された火翼は教官に向かってパチリと片目を閉じる。 「そんなのカンニングでバッチリっす」 冗談で言ったつもりだったのだが、 「阿呆! そんなことをしたら首へし折って川に捨てるぞ!」 怒鳴る教官にうんざりする。 ガシッと腕を掴まれた火翼は、そのままずるずると教官に引きずられていく。 「またお会いしましょう」 引きずられていく火翼の耳に夕霧の声が届いた。 火翼はふっと口の端をつり上げる。 おー……これ楽だな……。 教官に引きずられることに反発するどころか、むしろ気に入ってしまった。 「またな、火翼さん!」 逃げないようにか、夕霧の腕が首に回された十志が手を振っているのを、火翼は情けないことに引きずられながら(火翼は幸せ)じっと見つめていたのだった――。
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