3.過去

21/21
2921人が本棚に入れています
本棚に追加
/498ページ
ズルズルと引きずり込まれる赤髪の少年がどこか余裕のまま、暗い眸で笑った。 「覚えてなよ……。ボクは再びキミたちを殺しに来るから」 穴が塞がっていく。 「ボクはザキラス。魔物の王、ザキラスだ!」 ………。 ………………。 火翼はぺたんと地面に座り込んで、ホッと息をついた。 「アレがお前の力か」 凶悪な顔で見下ろす霧雪蒼牙に火翼はギクリとする。 ――殺される……っ 「……お前の力に助けられたな」 言っている言葉は感謝のようだが、声に感情がこもっていない。 火翼は霧雪蒼牙の言葉に首を傾げる。 ……助け、た? いやいや……あれは霧雪蒼牙がおれを投げただけじゃ……? 絶対おれを殺す気満々だったし。 実際、火翼は何もしていない。 「だが……」 そう言って、霧雪蒼牙が不思議そうにしていた火翼の額に触れる。 「その力は災いとなり得るものだ」 「抑えさせてもらうぞ」と霧雪蒼牙が言った直後に火翼の記憶は消えている。 ――アレガオマエノチカラカ――…。 一体どんな力だと言うのだろう……? .
/498ページ

最初のコメントを投稿しよう!