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その時
「駄目だ」
低くキッパリとした声で言いきったのは
「……和樹………」
私はそう呟いて、腕を組んでいる彼を見て絶望した。
「……な…んで?」
すがる様に和樹を見るけど
「コイツ等にだって自分の生活ってもんが有るんだ」
「……」
そう言われたら何も言い返せない。
私は“部外者”であって、こんなワガママが言える立場ではない。
「……わかった」
すっと立ち上がった私は出口へと向かった。
出てどうしようか。
ここは知らない地。
だから当たり前のように、私を助けてくれる知り合いなんていない。
フラフラと足を進める私に
「何処に行く気だ」
後ろから和樹が声を掛けてきた。
行くところなんてないよ
なんて彼らには言えない。
私は溢れだす何かを耐えるために唇をギュッと結んだ。
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