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鉄の扉で小山圭の駄々を捏ねる声は遮断され、重苦しい空気だけが閉じ込められた。
和樹が扉に鍵を掛け、こっちに歩いてくる。
その歩き方で。
シンさんが指でコツコツと机を叩く。
その行動で。
二人がどれだけイラついているのか感じられる。
そんな中、私はただ小さくなって自分の存在を消そうと努力するだけ。
ピリピリした空気。
口を開いたのはシンさんだった。
「話を戻すけど…」
その声に和樹が舌打ちをする。
和樹の目線の先には私…正確には私の小山圭にキスされた左頬。
だから、私が舌打ちをされたみたいでさっきよりも体を小さくした。
「話を戻すも何もねぇ。」
そう言って視線の先を私からシンさんへと移す。
「何もねぇって……」
「シン」
反論しようとしたシンさんは和樹に名前を呼ばれてハッとしたように口を紡いだ。
さっきとはまた一段と低い、有無を言わせぬ声。
周囲の人間を黙らせる王者の声。
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