吹き抜ける群青とすり抜ける鮮血

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「僕も桜にちょっと相談したいことがあったからちょうど良かったよ」 「晴香の事かな?」 ずばりと指摘してくる。本当に勘が良い。 「分かる?」 「私もちょっと晴香の事気になっていたからね」 「あれから晴香の様子は桜から見てどう?」 もちろん、あの遊園地に行った日からの事だ。 「ぱっと見は普通に見えるよ。いつもの明るくて人当たりがよくで人に優しい晴香だよ」 確かに、僕にもそう見える。強いて今までと違うというと亮二と話をしていないぐらいだ。 「でも、明らかに無理をしてる」 桜が言った。僕もそう思う。 「というよりも、無理がきかなくなってきていると言うほうが正しいかな」 無理がきかなくなってきている? 「どういうこと?」 「んー。明は桜の事どういう子だと思っている?」 「……そうだね。人当たりが良くて、よく周りを見ている子だと思う。人に気を使って上手く立ち回れる子だよ。でも、どれも真剣に向き合ってる。相手の気持ちに立って相手の気持ちを真剣にくみ取ろうとする子だと思う。よく言えば思いやりの深い子だし、穿った見かたをすれば感情移入が過ぎる直情的な面もある」 誰にでも真剣で、真面目すぎる。それが南晴香という女の子だと思う。 「確かに。その通りだと思う。私にもそう見える」 桜の言葉に少しほっとする僕の人を見る目も悪くは無いようだ。でも、続いた言葉に僕の心が凍り付いた。 「そういう性格に見えるように彼女は演じている」 桜は僕が聞き逃さないようにはっきりとゆっくり言い切った。
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