吹き抜ける群青とすり抜ける鮮血

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ポケットの携帯が震える。取り出して画面を確認すると桜からの着信だった。 「やぁやぁ。元気?」 「それなりにね」 「あんまり元気ありそうな感じじゃないね」 断言してくるので思わず笑ってしまう。 「違った?」 「いや、違わないよ。桜にはかなわない」 「誉めたって君への愛情ぐらいしか出てこないよ」 「悪い冗談だ」 電話の向こうでくすくすと笑う声が聞こえてきた。 「それで、何か用?」 「いや、別に。明の声が聴きたくなっただけだよ」 「嘘だろ」 「そうだね。ちゃんと用事があるんだ」 またくすくすと笑う。今日の桜は妙にご機嫌のようだ。
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