吹き抜ける群青とすり抜ける鮮血

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「演じている?」 桜の言っている意味が理解できず、理解はできていたが納得できずに聞き返す。 「彼女は、南晴香というキャラクターを演じているんだよ。今、明が言った性格の人物に見えるように努力している」 「でも、そんなのは皆やっていることだろう?」 人前で性格を使い分けるなんて珍しい事じゃない。人によって性格が違うと言うとそんな事はないと思うかもしれない。悪口を言われているような気持になるかもしれないが実際そんなことは無い。コミュニティが違えば自分の立ち位置が違う。 例えば中学の同級生と遊ぶ時と高校の友人たちと遊ぶ時で自分のキャラクターが違うことは当然の事だろう。 学校の先生の前で友人の前、家族の前で態度が違うのはおかしい事じゃない。それが自然であり、それが自分と言うものだ。 「違うよ明。皆、私や明が人前でキャラクターや振る舞いが違うのと晴香のそれは違う。私が初めて明に会った時、晴香や亮二に会った時。あの頃、私は皆と初対面だった。それに交通事故のせいで新学期に出遅れてしまっていた。だから、最初は大人しい引っ込み思案のような人間に私は見えていたと思う。私は実際、戸惑っていたんだよ。高校生になったばかりで、最初の一番大切な時期。友達や人間関係を作る期間に私は教室に居なかったんだ。私が登校した時に教室内ですでにグループができていた。後からそのグループの中に入るのは大変だから緊張していたんだ」 ああ、だからあんなに大人しかったのかと思う。
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