よろず屋本舗

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 ここはよろず屋本舗、色々な珍しい商品を数多く取り扱いしております。あなたの必要としているものは何ですか?  申し遅れました、私店主のクリスと申します。お代などはいただきません。あなたの笑顔で充分ですから。  今宵もまたお客様がお見えになられたようです。 「あのう……。」  三十代半ばのサラリーマン、彼のが求めているものは? 「家族仲良くできるものはありますか?家庭をないがしろにしてきたつもりもありませんが、ここ最近家族での会話がなく。まるで家庭内別居しているみたいで。」 「わかりました。何かお探しします。」  私は奥に下がり商品を探してみることにした。 「少し時間が掛かりそうなので、よろしかったらこちらをお召し上がり下さい。」  私は一杯のラーメンを差し出した。 「ちょうどお腹がすいてて…。」  ラーメンを口にしたとたん男は戸惑いの表情をした。 「お口にあいませんでしたか?すぐに代わりをお持ちします。」  私はすぐさま別のラーメンを差し出した。 「さっきと同じじゃ、ん!なんだかいい香りが…。」  男はすぐにラーメンを食べ終えた。 「さっきのとは全然違いますね。材料を変えたんですか?」 「いえ、材料は一切変えておりません。ただ変えたのは手間をかけた事!どんなに良い材料でも手間を惜しんではいいものは出来ない。家庭も同じではありませんか?仕事だと理由付けて会話する手間を省いてはいませんか?」  男はハッとした表情で考え込んだ。 「すぐにお帰りなさい。今なら優しく迎えてくれるでしょう。私が出来る事はここまで、そこからはあなた次第です。」 「あっ、あのうお代は?」 「いりません。あなたの笑顔で結構ですから。」  数日後、私の贈ったカニ鍋を取り囲む不器用な笑顔の男とその家族の写真が送られてきた。  さて今宵はどんなお客様がお見えになるのでしょうか?
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