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だが今はそんな事考えている暇はない、早く帰らなければまた“あれ”をされる……
そう思うと私の足はさっきまで動けなかったのが嘘のように軽やかに動き出した
~楓視点~
「……………ハァ」
これで何回目かな?さっきからため息が止まらない
でも理由は簡単、さっきの夏紀ちゃんとの喧嘩が原因
考えてみれば友達になってから始めての喧嘩、気持ちがどんどん雲っていくのが自分でもわかる
「……………ハァ」
また、ため息が出る……なんか少し鬱になりそう
「楓、大丈夫か?」
あっ、白夜一緒だったの忘れてた
「……………(コクッ)」
一応返事はしよう、私は喋るのあんまり得意じゃないから身振りのほうが早いし、伝わりやすい
「嘘だな」
「……………えっ」
正直かなり驚いた
私の返事に白夜は真剣な眼差しで否定したから
「楓、お前は嘘を言っている。今のお前は夏紀の事が気に掛かってしかたない……違うか?」
「…………………」
私は黙る事しか出来なかった
白夜の言った言葉が余りにも的を得ていたから……まるで心の中を見透かされたように
「……プッハハハハハ!そう泣きそうな顔すんなって、別に怒ってる訳じゃないんだから、な?」
ナデナデ
そう言いながら白夜は私の頭を撫でる
「……………………」
今度の私は別の意味で言葉が出なかった
なんだろう……白夜に頭を撫でられると凄い落ち着く
「いいか、楓…俺はお前の友達なんだぞ?会ってまだ一日も経っちゃいないが俺はそう思ってる、楓は違うのか?」
私の頭を撫でながら優しく語りかけてくる白夜の言葉が何故か嬉しかった
「…………(フルフル)」
だから私は否定しない……いや出来ない
「だったら、俺を信じろよ……友達だったら苦しい時も悲しい時も一緒に乗り越えるものだろ?……だから、俺を信じろ」
その言葉が余りに力強くて……余りに優しくて私はいつの間にか泣いていた
拭いても拭いても涙が止まらない
フキフキ
「ほらほら泣くなよ、可愛い顔が台なしだぜ?」
白夜はズルイ…あんなふうに優しくされて、こんなふうに言われたら私は………
でも今最優先すべきはこの事じゃない、だから今は……
「…白夜………お願い……夏紀ちゃんを……助けて」
貴方の“友達”として傍にいよう
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