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タッ、タッ、タッ
「ハァ、ハァ……こ、来ないで」
時間帯は深夜、場所は辺りには閉まっているものの店が立ち並んでいる所を見ると商店街だろうか
昼間は人々でごった返しているであろう場所も今は夜、人は愚か犬や猫等の気配すらない
そこに仕切りに後ろを気にしながら必死の形相で何かから逃げる女性が息絶え絶えに走ってきた
「ハァ、ハァ、ハァ………も、もう来な「グヘヘ、どうして逃げるんだい?僕の愛しい君よ」」
その声を聞いた瞬間、女性の顔が凍りついた
女性の後ろにはいかにも根暗、所謂オタク顔と言うのか髪が眼を隠す程伸び体もひょろっとした男が下品な笑い声を出しながら立っていた
ヘタッ
「い、いや!……来ないで!」
その男の顔を見た瞬間、女性はその場にへたりこんでしまった
「どうして?僕達は愛し合っているじゃないか」
「し、知らない!貴方なんて私しらない!」
詰まる所、この女性に憧れた男が妄想の行き過ぎで暴走したという所か
「知らない?そんな訳ないだろ?あんなに愛し合ったのに?……有り得ない有り得ない有り得ない有り得ない有り得ない有り得ないブツブツ」
ぶつぶつと独り言の様に呟き、目も焦点が定まっていない
「そうかわかったぞ、お前は僕の愛しい君の偽物なんだ、そうだそうに違いない、なら偽物は……………コロサナキャ」
男が自分の懐からサッと取り出したのは出刃包丁
「ひっ!こ、来ないで!お願い来ないで~!!」
女性は必死で立ち上がろうとしているのだが恐怖の余り腰が抜けて立てない
それでも足を懸命に使い這うように後ろに下がろうとする
「偽物はコロサナキャ、コロサナキャ、コロサナキャ、コロサナキャ、コロサナキャ、コロサナキャブツブツ」
だが男も焦点の定まっていない眼を半開きにし、ふらふらと女性に近く
それにつれて女性も必死で男から逃げる様に下がる
しかし何事にも限界はあるもの、今で言う限界とは下がれる距離つまり女性はこれ以上下がれなくなってしまった
「いや、いや、いや!!」
恐怖に怯え悲鳴をあげる女性の前で振り上げられる男の出刃包丁
「コロサナキャ、コロサナキャ、コロサナキャ、コロサナキャ、コロサナキャ、コロサナキャ、コロサナキャ」
そして遂に振り下ろされた出刃包丁、瞬間的か本能か女性は目を強くつむり頭を抱く
ザクッ……
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