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そして辺りに響く鋭利な刃物で生の肉を引き裂く嫌な音
ポタッ、ポタッ、ポタッ
次に聞こえてきたのは何かから滴り落ちる水音
「………………?」
しかし現在進行形で聞こえている水音の発生元は女性からではない
女性は不審に思い今まで強くつむっていた目を開けるとそこには………
「ったく、こんなもん振り回して危ね~だろうが」
流れるようになびく漆黒の黒髪、体つきはモデルの様にスラッとしていて身長は180cmだろうか、顔は見えないが少し幼さが残る声からすると高校生位だろう
その少年が女性の前に立ち、男が持っていた出刃包丁を素手で受け止めていた
「だ、誰だお前は!!」
「俺か?俺は通りすがりの只の高校生だ」
少年は言った“只の高校生”だと
しかし女性はその言葉に疑問を持った、どうして“只の高校生”の筈の少年が素手で包丁を止め尚且つ平然とした態度でいれるのかと
しかしいくら考えても答えらしい答えは出てこない、ましてや自分は今ストーカーに襲われている最中、普通の思考が出来るほうが可笑しい
「そうかわかったぞ、お前はその女と一緒に僕から愛しの君を奪おうとする悪魔だな!そうだ、そうに違いない!ならその女と一緒にコロシテヤル!!」
女性がそんな事を考えている間にもストーカー男は更なる妄想が膨らみ、少年の手から包丁を引き抜き振り回しだす
「ほっ、よっ、おっと」
しかしその刃は少年に当たる事なく空をきるばかり
「ハァ、ハァ、ハァ、コロス、コロス、コロス、コロス、コロス、コロス、コロス、コロス、コロス、コロス、コロス」
息絶え絶えになりながらも必死で包丁を振り回す男
カランッ、カランッ
少年が避け男が切り付ける、そんな単純な行動を何度繰り返しただろうか、遂に男の体力は限界に達し包丁を地面に落とした
ドスッ!
「うっ…!」
バタッ
少年はこのチャンスを逃すまいと素早く男の首筋に手刀で殴り気絶させる
「ふぅ~やっと終わった~、後はこいつを警察に突き出すだけだな」
少年は気絶している男の襟を掴み、問答無用でズルズルと引きずって女性に近づく
「大丈夫か?」
「は、はいっ!あ、ありが…とう…」
女性は始めて少年の顔を見て息を飲んだ
スラッとした顔の輪郭、唇は細く鼻もあるべくしてそこにある感じ、そしてなにより女性の目を引いたのは少年の白と黒の瞳、所謂オッドアイ
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