序章

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 映画やドラマで教頭先生役を探している監督に真っ先にスカウトされそうな外見である。(いや、スカウトは監督の仕事じゃないか……)  とりあえず出演決定おめでとうございます。 「良かった。遅いから迷ったんじゃないかと思って探しに行こうと思ってたんだよ」 「はあ……」  それならば職員玄関を開けておいてくれればいいのに。と思いながらも口には出さず、チラと中の時計を見る。ここに来いと言われた十分前である。  この人の体内時計はどうなっているのだろう。 「さあ入って。今一人、校長先生に挨拶してるけど一緒に入って挨拶してきな」  一人? 俺の他にも転校してきたやつがいるのか? 野郎じゃないことを願うばかりである。 「分かりました」  と返事をしたその瞬間俺は固まった。  ……何だ? 臭いぞ? 「どうしたんだい?」  後ろから付いてこない俺に気付いた教頭(多分)がやや心配した表情で近付いて訊(き)いてくる。  それとの距離に比例し、匂いが強烈になってくる。 「い、いえ、何でもないです。すいません……」 「……? そうかい?」  そして俺は教頭と間をおきながら職員室を回った。  何故ならさっき嗅ぎとったあの異臭は教頭の身体から発生されているっぽいからである。  加齢臭ってやつか? 歳をとってもああはなりたくないものである。
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