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コウモリさんの発言はにわかには信じられなかった。
馬鹿馬鹿しい、冗談でしょうと言ってしまうことは簡単なのに、言えないでいるのは何故だろう。
ヒュッと自分が息を吸う音で息をつめていたことに気付いた。
「信じられない?」
(当たり前だろ…)
「でも、本当なんだ」
(証拠はあるのかよ…)
「どうしても信じられないって言うなら、
…鏡、見ればいい」
「……!」
瞬きの間にコウモリさんは俺の後ろに回って、襟足を持ち上げるように首に手をかけて。
熱い、湿った柔肉が肌を這った。
(―――舌…!)
驚愕の表情を隠さないまま、背後めがけて左腕を振った。
勢いのまま振り向いたそこには、
(え……、何だ、これ……!?)
さっきと全く変わらない黒衣の男、の身体を突き通す自分の腕。
「ゆず。元気なのはいいことだが、乱暴はよくないぞ」
突き抜けた腕の周りは霧のように薄く霞んで、渦巻いて…
「あぁ、ほら。貧血なのにいきなり動くから…」
世界が、歪んだ。
白んで、消えた。
「おやすみ。また会おう」
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