春眠暁を覚えず

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坂を登りきって流れのままに歩けばもうそこは自分の教室、自分の席。 鞄を置いて、息を吐いた。 「は―…遅刻しないで済んだ……良かった…」 「ほう…それは良かったな、柴。今日遅刻するともれなくグラウンド100周だったぞ…」 ゾワッ 「わっ!神川先生…っ!あ、お、お早うございますっ!」 背中の筋が泡立った音を聞いて、すぐ誰か分かった。 ドアの目の前の俺の席は目に入りやすいのか、誰でも来てすぐ話しかけられる。 そのせいで度々先生には驚かされている。 「お早う。ところでお前の首、何だか凄い傷だが…大丈夫か?」 「え、……………!!」 (噛み傷隠してくんの、忘れた―!!) 「痛むようなら保険室へ行け。……一人暮らしなんだからあまり危険なことはしないように」 「あ、はい………」 先生は鬼のように怖いけど、一人暮らしの俺を何かと気にかけてくれる。 良い先生なんだと思う。 威圧感さえ減れば。 痛みは無かったけど、何か隠せるものが欲しくて俺は朝礼もそこそこに保険室へ向かった。
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