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「失礼しま―…いないな、先生…」
電気のついてない保険室内は朝の光を通さない立地だからか酷く薄暗い。
しかも、ほとんど来たことが無いせいでどこに何があるのか全然分からなかった。
「気味悪いな…早くなんか隠せるもの…絆創膏とか…」
手探りで棚を漁る。
氷枕やピンセットばかり見つかって肝心な絆創膏は出てこない。
「くそ…どこだよ―」
「お探しのモノはこれかい?」
「………ぎゃあああっ!!」
保険室の隅から急に声がして、恥も外聞もなく悲鳴が出た。
頭がキーンとして軽いパニック。
見えてるのに相手が認識出来ない。
「嫌だなぁ、ぎゃああだって。…って、それが普通だよな―」
間延びする低音。
暗がりからゆっくり現れたのは、
「あ…!吸血鬼……の」
「そ。吸血鬼のコウモリさんですよ、ゆず君」
ヘラッと笑って見せる唇に、牙。
あれが俺の首を刺し貫いて、大きな噛み傷を残したんだ。
(この人、何しにココに…また噛まれるなら逃げなきゃ……!)
思うのと同時に俺は駆け出した。
と、思った。
実際は走り出した途端に腕を捕まれて、何だかデジャブな…
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