五里霧中

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何をどうしたらいいか全然分からない。 本当はもっとマトモでいたいのに、暗闇の中の赤い目がちらついてどうにも落ち着いていられない。 全て夢にしてしまいたい。 起きたら自分が他人だったらいいのに。 例えば、俺はもう大人で頭も良くて現実主義者で背が高くて無条件に人に好かれて、 怖いものなんか何もない、他人だったら。 (そんなの現実逃避だ…… ……………… ………そうだ、逃げよう ……納得がいくまで逃げよう) そう思うが早いか、俺は教室から駆け出した。 階段を滑るように降りて駐輪場へ飛び込んだ。 奇跡的に引っ付かんできた鞄を籠に放り込んで、通学路とは逆に。 後ろで始業のベルが鳴って、今が休み時間だったことがやっと解った。
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