五里霧中

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ひたすらペダルをこいだら、血行が良くなったのか少し気が楽になった。 周りの景色は見知った町内から記憶の曖昧な土地のものに変わっていて、青々とした田園が初夏の近さを教えた。 照りつける太陽が新緑と俺のシャツを透かしている。 (軽く汗ばんできた、どっかで休憩しようかな…) 田園のそこかしこにブロッコリーのような少し遠くの雑木林が目に入る。 正面に見える道沿いにもちょうどいい具合のがある。 (あそこでいいか…はぁ、暑…) 耳や髪をすり抜ける風が熱のこもった皮膚を少しだけ冷やす。 木陰はもっと気持ちいいだろう。 そう思ったらペダルを漕ぐ足に力が入った。
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