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モコモコしたシルエットはしだいに枝分かれが見えるようになり、葉の一枚一枚まで分かるようになると、俺はもう影の中にいた。
自転車を道の脇に止めて大きく息を吸った。
涼しい。
森は帰り道にあるものよりも小さくて、木漏れ日がチラチラと足元に揺れている。
ふと、森の奥に目をやると、どうやら向こう側には古い建物があるらしい。
神社か寺かどちらかだろう。
マイナスイオンたっぷりの空気を吸いながら、俺は建物に近付いた。
(わ、意外に小さいな。神社…じゃない、祠だ)
近くでみればそれは建物と呼ぶには小さいものだった。
俺の背丈より少し大きいそれは、土地神を祀る祠。
覗き込んでみたが、古びているわりにホコリとかは溜まってない。
多分、土地の所有者か何かが、
「……何、してるんで…?」
「ぎゃああああっ!!!」
不意を突かれて人の声がしたもんだから思いっきり叫んでしまった。
声の方に振り返ると、迷惑そうな顔の青年が立っていた。
俺はどちらかというと童顔だから向こうは分からないかもしれないが、青年は同世代くらいに見える。
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