春眠暁を覚えず

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キラキラ笑顔の受付さんに見送られて、俺は献血センターを出た。 もうすっかり春らしくなってきたけど、6時すぎると少し冷えてくる。 (早く帰ろう…) ブレザーのボタンを閉めて早足に歩いた。 (うわ…暗い!) めったに使わない近道を通ったらその暗さに驚いた。 森の影で道は真っ暗で、踏み入れた自分の足さえ曖昧にしか見えない。 茂みの奥で夜なのにカラスの鳴き声が聞こえて、つい肩が震えた。 (こ、怖…こんな時間にこの道通るんじゃなかった!) 今更後悔しても遅い。 しょうがないので俺は小走りに通り抜けることにした。
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