五里霧中

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「………恐かった、ですか…?」 「あ、当たり前だろ…っ!!……だって、お、俺…エモノ、って………」 思い出したら急に不安になって、指先が冷えていった。 「…獲物……ですか、 ………また来る、と…言われたんですね…?」 「…、……あぁ…」 呻きとも取れない蚊の鳴くような声が出た。 一種のトラウマのようになってしまったコウモリさん絡みの話は、長く続けたくなかった。 それでも、栂池は続けて聞いてきた。 「それは……いつ頃のことです…?」 「……い、一ヶ月前くらい」 そう、丁度今日で一ヶ月だ。 ずっと怖かった。 気休めも全然効かなくて、何も手につかないくらいずっと。 「、……もう、この話…すんの、止めないか…? …情けないけど、今も、辛い……っ」 正直、だんだん目の周りが熱くなってきている。 息も詰まってきて、本当にヤバい。 (泣きそう……っ)
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