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「………まぁ…いいことにしましょう、か……
羊は従順でなければ、いけませんよね…………」
細い三日月のように吊り上がった口元が微かに動いてそう呟いたら、顎に沿えられていた指も離れていった。
でも、俺の身体はまだ緊張したまま動けない。
蛇に睨まれた蛙って、こんな感じなんだろうな。
さっきまでクラスメートみたいに話してたのが一気にひっくり返しだ。
「…いつまで、
そこでボンヤリ、してるんです……?
……君は後はもう、お家に帰って…狼が食べにくるのを、待てば、いいんですよ…」
「な……っ!」
「そしたら俺が、後ろから
ズドン
です……ね?」
俺は、羊は。
守られる側なのに生きた心地がしなかった。
栂池自体がなんだか化物染みてて、俺は情けないけど一目散に逃げ出した。
気付いたら家にいた。
でもやっぱり生きた心地がしなかった。
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