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「…コウモリさん」
呟くように声をかければ、うつむいたら顔が上がる。
「今日は血は吸わないんですか?」
「……!
あ…あぁ、いいんだ」
微かな動揺。
瞳の赤が少し濁ったように見えた。
(…それならそれでいいんだけど)
「そうですか、良かった。
紅茶でも淹れましょうか?」
「……頼む」
はにかんで見せたのは彼なりの強がりだ。
廊下に面した小さいキッチンに立ってヤカンを火にかける。
俺はあんまりお茶に凝ったりするタイプではないから、ティーバッグの紅茶しか淹れられ無いけど多分大丈夫だろう。
(だってコウモリさんが飲みたいのは紅茶なんかじゃない。
本当は俺の血が飲みたくってしょうがないんだろう。
でも紳士的な性格が邪魔して無理強いができないんだな、きっと)
なら、ここから立ち去ればいいのにね、と思った所で沸騰したヤカンから甲高い音が鳴った。
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