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「はい、粗茶ですが―」
俺はさっきまでの緊張感や恐怖が薄まりつつあるのを感じながら濃いめの紅茶を机に置いた。
「……あぁ、有り難う」
「いーえ」
二人で囲むのが限度の小さい机はコウモリさんと俺の距離をさらに近くしている。
「電気もつけないで深夜にお茶会なんてだいぶ変ですね」
「そうだな……」
さっきから返事が素っ気ないのは鎧えなくなっているんだろう。
(紳士っぽい良い人の面…
…人じゃないけど)
レモンをナイフで小さくして紅茶に搾る。
砂糖をたっぷり入れた若干違う飲み物になりかけている紅茶をゆっくり口に含んだ。
「コウモリさん、1つ聞いてもいいですか?」
「…何だ」
「今の吸血鬼ってみんなそうなんですか?」
問いかけた相手は心底不思議そうな顔をしていた。
「そうって…?」
「コウモリさんはなんていうか、礼儀正しくて賢い感じなのに…大胆だと思えば臆病だったり」
「それは随分だな。理性的な気遣いさんなんだよ」
苦笑。
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