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女が教室から去ったあと、つららはずぶ濡れになった体のまま何も考えずに歩こうとした。
すると床も水浸しなためコケて四つんばいになってしまった。
つららは涙をぐっとこらえて、また立ち上がり廊下に設置してある掃除用具箱を開け雑巾を取り出し床を拭いた。
『もう太陽くんに迷惑かけられないから。』
そういって独り言を言った後、濡れたままの雑巾を箱に戻しカバンを持って下校した。
その後はいつも通りタロウの所へ行く。
橋の下に置き去りにされたタロウはいつもつららが来るのを待っている。
そうしてつららが来ると尻尾を振り回してよって来る。
『ごはんですよ。』
つららは何食わぬ顔でいつも通りカバンからビニール袋に入ったパンの耳を与えた。飲み物は朝コンビニで買ってきた小パックの牛乳である。
つららは、少し黙ってからタロウに言った。
『わたし…ね。もう明日からずっと学校に行かないの…だからね、もうタロウと会えないの。』
タロウは無邪気に耳を食べていた。
つららは、川の方へ歩いていった。
『ありがとね。お母さん、お父さん。』
そう言って川に身を投げ出し水の流れに流されていった。
タロウは食べていたミミをほっぽり、つららの後を走って追い掛けて行った。
タロウは怒鳴るように吠えた。まるで誰かに助けを呼ぶかのように。
だが、つららの意識は遠のいていった。
…
……
次の日
学校にはつららの姿はなかった。
つららが自殺したと、学校中に噂が流れた。
その日、太陽も風邪を理由に欠席していた。
その理由はつららが入院している病院へお見舞いに行っていたからである。
『ったく!相変わらず人騒がせだな。』と太陽。
つららは黙っていた。
容体はただの風邪ですんだ。
『タロウとかいう犬に感謝しろよ。お使いの帰りにキャンキャン吠えてる犬の声がしたから何事だと思って見てみたらお前が流されてんだもんな~。』
その後は太陽が川に飛び込みつららを助け出した。
つららは小さく『ごめんなさい』と謝った。
『とにかく、死ぬなんて考えんな!強く生きろ!私がいてもなんて思うな。…わたしでもできるとか強く思え。』
『わ…わたしでも?』つららはその言葉を繰り返し言った。
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