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「どれを信じるんだ」
悪魔の声がする。
あたしは答えた。
「その人の言葉をそのまま素直に信じるわ。あたしは思っていない事は口にしない」
『誰もがそうとは限らない。それでも出来るのか?』
悪魔は悲しげに見ている。
あたしは黙ってしまった。
悪魔は、窓枠に腰掛けて言った。
『”疑えばきりがない。まずは信じていたい”
温いな。どうした?
またあの時のように泣きたいか。自分を追い込みたいのか?
大歓迎だけどな』
「信じてるフリくらいは出来る」
あたしは動揺を悟られないようタバコに火をつけた。
『嘘をつくのか』
悪魔は漆黒の長い髪を指先で弄びながら言った。
「嘘じゃないわ」
『ないものをあるように見せる事をどう肯定する?』
あたしの言葉に一瞬も許さず冷静な低い声をはさむ。
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