絶体絶命

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森の中の朽ち掛けた小屋を、黒いスーツを着た十数人の男たちが取り囲んでいた。 ひとりだけ、羽織袴姿の人物がいる。 悪名高き鈴木冨治郎だ。 夕暮れが始まろうとしていた。 鈴木冨治郎は 「そこから出てこい!」 と怒鳴った。 私は無言で応えた。 それはすなわち 「いやだ!」 という意志表示だ。 鈴木冨治郎は 「出てこなければ小屋に火をつける」 と言い放った。 鈴木冨治郎ならやるだろう。 火をつけられたらどうにもならない。 アクション映画の主人公なら何か打つ手を思いつくのだろうが、私には手段や作戦はおろか、何の考えも浮かばなかった。 私は只のサラリーマンだ。 家のローンはあるが、隠し球など一切なかった。 それでも私は無言を通した。 「わしは鈴木冨治郎だ。わしに逆らう者などこの世に存在しない。もし存在したとしてもすぐに存在しなくなる。 わしの言ってる意味はわかるな? 丸焦げになるのはいやだろう? 明日の朝日が見たかったらすぐに出てくるんだ」 鉄の棒で串刺しにされたブタの丸焼きを思い浮かべ、膝が震え始めた。
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