第1章

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母は帰ってくるなり僕に言った。 『健ちゃん………ごめんね。 お父ちゃん……普段は大人しいんやけど、カッとなると人間が変わってしまうみたいや。 お母さんが間男なんかするわけないのに。』 ……【間男】?…… 六歳の子供に【間男】の意味なんて解る訳ない。 普通は言うべき言葉でもない。 母はそんな調子で… あまり物事を深く考えずに言葉を発する人だった。 おそらく本人には悪気はなくて… 元々そういう【性分】なのである。 当然その後も あんな親父の性格に対して無神経な母親の言葉が災いし、 幾度となく喧嘩が始まる事になった。 ただそんな親父でも… 僕と妹に手を上げる事はなかった。
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