プロローグ

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何日後だったろう? それまでの記憶は曖昧だったのに… 【あの日】の事だけはよく覚えている。 『健一郎……これを持って家へ帰りなさい。』 そう言うと母親は… 僕に風呂敷包みをひとつ持たせた。 『お母ちゃんは?』 『……………。』 母はとにかく… お父さんの所へ行けと言うだけだった。 爺さんが… 『妹の《美奈子》は此処へ置いても… 長男の《健一郎》は向こうへ帰そう。』 …と言ったらしい。 何年か後にそう聞いた。 帰れるのは嬉しかったけど、みんな一緒だと思っていた。 僕は泣きながら荷物をさげ… 一人とぼとぼ 家に向かって歩き出した。
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