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「おはようございます」
早番の翌朝…ドアを開けたらそこには、俺の寝不足の原因となった人物がニコやかに、当たり前のように立っていた。
「…何をしてるんだ?」
「何って…挨拶ですが?」
「そんなことを聞いてるんじゃない!!何でそこに立ってんだってことだ!!」
怒声を飛ばす俺に、尚神楽は微笑んだ。
…どうしよう…やっぱり顔がイイ奴は違うな。
って、何を考えてんだ俺は!!
「俺、今日から先生に付きまとうことにしたんです」
「はい…?」
「覚悟してくださいって言いましたよね?」
いやいや…何を言い始めたんだ、こいつは…。
若干眩暈を感じる。
「…俺は自転車で行くんだぞ?」
「知ってますよ。だから俺もチャリ乗ってきました」
「…えぇっ??」
ドアを締めて、慌てて階段を降りると、俺のアパートの前には、見知らぬ一台の立派な自転車。
マジで…自転車持ってきやがったのか!?
口が開いたまま塞がらない…という状態になり立ち尽くす。
「ねっ?」
俺の顔を覗き込む神楽。
やられた…。俺は頭を抱える。
「先生がいつも通る通勤路、俺も一緒に行っていいですよね?俺の知らない先生のこと、いっぱい知りたいんです」
だから…そんな顔で笑いかけるなッ!!
大人びてるくせに、たまにこうやって見せる子供っぽい神楽の一面。こんなところに、俺の怒りは鎮められてしまう。
本当にどうしちまったんだよ俺は…。
「はぁ…結構飛ばすぞ?」
「お構いなく」
ん?そういえば…。
「お前、いつから待ってたわけ?」
「さぁ…六時くらいですかね」
「六時!?なんで!?」
「なんでって…何時に出るか分からないから」
「だってお前の家って駅二つ向こうだよな?それって…」
だいぶ早起きだったんじゃ…?
「朝一緒に行きたかったので。俺が勝手にやったことですから、先生は気にしないでください」
「ばッ、バカ!!そんなこと誰も言ってないだろ!!」
そう吐いて俺は奥の駐輪場へと向かう。
そこまでするなんて…どうかしてる…ッ!!
そう思ってるのに、俺の心臓はうるさく跳ね上がっていた。
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