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それも何だか可愛く見えて、俺は肩を揺らしながら笑った。
「いじけんなって。いいんじゃね?お前、子供らしさがあんまりないんだし」
笑いながら自転車を押しつつ歩く俺を、神楽はジーッと見つめてくる。
「なんだ?」
神楽は嬉しそうに微笑む。
「やっと笑ってくれましたね」
「へ?」
「今まで話したことなくて、昨日ようやくまともに話したのに、怒鳴ってばっかりだったでしょ」
「それはお前に原因があるだろーに…」
「でも今は、いつも誰かと話してる時みたいに笑ってくれてる。その笑顔、今は俺だけに向けられてるものだから」
甘く疼く心臓、急激に上昇する体温。
いつの間にか着いた駐輪場に自転車を停めながら、それを悟られないように毒吐く。
「ち、調子乗るなよッ!?お前が俺を怒らせなきゃいいんだから!!」
「それ思いましたけど、本当に怒ってる時ってあんまりないですよね?昨日のラブホ前くらいですか。それ以外は照れ隠しに見えますが」
「なッ…!!」
反論しようとした時、後ろから声がした。
「谷崎先生…?」
振り返ると、そこには目を丸くした山科先生が立っていた。
「や、山科先生…!?」
「今…神楽が…ラブホって……?」
ヤバい!!どこから聞いてたんだ!?
「あの、それは…っ」
何か言おうと焦っていると、あろうことか神楽が俺の首に腕を回した。
「神楽!?何を…!?」
「だから、何?」
俺の言葉を無視し、神楽が挑発的に山科先生を睨み付ける。
山科先生は神楽の睨みに怯む事なく、目を鋭くした。
山科先生がこんな表情するなんて…いつも穏やかに微笑んでいるところしか見た事がない。
「神楽お前、谷崎先生に変なちょっかい出してるのか?」
「関係ねぇだろ」
「そんなわけあるか。昨日だって迷惑かけておいて…」
「昨日のことは感謝してる。お前にしてはイイ仕事したよ。お陰で、ヒナ先生とこんな仲になったからな」
「どんな仲だッ!!山科先生は担任だろ、『お前』なんて言うんじゃない!!」
神楽の腕の中でもがいてみるが、頭一つ分以上違う神楽を見上げて叫んでも単なる虚勢だ。
「いいんですよ、谷崎先生」
「でも…」
神楽が明らかに不機嫌な空気を纏う。
本当に嫌いなんだな…。
「ヒナ先生相手にイイ格好してんなよ」
「そんなつもりない。早く先生を離せ。誰かに見られたら先生が困るだろ」
そうだ!!その通りです!!
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