猛獣スチューデント4

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「先生が困っても、周囲に俺の気持ち知らしめるには丁度イイ」 そんな神楽のセリフに、羞恥の限界が来た。 俺は神楽の腕を振り払い、身体を反転させる。 「知らしめられて堪るかッ!!いい加減にしろ!!」 殴ってやれるなら殴りたいが、教師たる立場だと生徒に手を上げるわけにはいかない。 憤懣やるかたないものが、身体をワナワナと震えさせた。 「山科先生、行きましょう!!」 怒りに任せ、ズンズン先を進む俺。 山科先生が神楽を一瞥して、俺の後を追う。 神楽は悔しげに俺たちを見ていたが、俺は振り返る事はなかった。 職員室に入れば、まだ来ている先生は少ない。 俺が席に着いた途端、山科先生が近付いてくる。 「先生…あれは一体…」 「あ、あの、どう思われてるか分かりませんがっ。俺と神楽の間には何もありませんからっ」 「本当に?」 「本当ですっ。ちょっと…懐いてるだけです」 訝しげな表情の山科先生だったが、小さく溜め息をつく。 「あいつは強引だから、度が過ぎて迷惑したら言ってくださいね」 「はい、すみません。あの…」 「はい?」 「神楽…いつもああなんですか?」 ああ…と言うと山科先生が苦笑する。 「そうですね。不甲斐ない担任です」 「いや、すみませんっ、そういう意味じゃ…!何だか…山科先生には特に悪意を持ってる、ような気がして」 「まぁ…それは否定しきれませんね」 「え?」 「ちょっと…個人的に、ね」 それだけ言って意味深に微笑む山科先生。 それ以上を聞ける雰囲気ではなく、俺は首を傾げるだけで終わった。 山科先生の知らない一面を垣間見たな…。 そう思っただけで済めばよかったのに、俺の心身はズンと鈍い重さを感じていた。 俺…なんでこんな…。 傷ついてる、みたいになってんだろう…。
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