猛獣スチューデント4

7/7
前へ
/177ページ
次へ
「谷崎先生っ、山科先生帰りましたか!?」 「は?えぇ、先程…どうかしましたか?」 「私、山科先生から資料借りたままだったんですが…明日の授業で使うって言ってたと思って。ああ…どうしようっ」 「なら俺届けますよ。確か山科先生電車通でしたよね?」 「え、でも…」 「俺自転車だからすぐ追いつきますし」 「そうですか?すみません!お願いしますっ」 「いえいえ。あ、俺今日も最後の戸締まりするんで、開けててくださいね」 俺は資料が入ってる大きな茶封筒を受け取ると、急いで職員室を出て行った。 駐輪場に向かうと、遠目に人影が二つ見えた。 あれは…? その人物が誰か判明し、俺は反射的に身を隠した。 嘘だろ…ッ!? 山科先生と…神楽!!? 思わず隠れちゃったけど、ど…どうしよう…。 「―――好きなんだ」 声を張ったわけではなく、静かな口調がハッキリ耳に届く。 その単語に、時が止まったような錯覚すらした。 山科…先生…? 「ずっと好きだった。気付いてたんだろ…?」 山科先生…?何言って…? 脈打つ心臓が痛い。 「だから何だよ」 低く、俺に向ける声とは違う声で神楽が言った。 「あんたの気持ちなんて関係ない。俺は俺だ」 「誰にも渡したくない」 「俺の勝手だ」 なんだよ…この会話。 山科先生が、神楽のことをずっと好きだった…? 『ちょっと…個人的に、ね』 そう言った山科先生が脳裏にフラッシュバックした。 あれは、こういう意味…? 「話は終わりか」 神楽が歩き出す。 ヤバっ…こっち来る!? そっと顔を出して様子を窺う。 「――――!!?」 キス…してる………!? 手から茶封筒が落ちる。ドサッと落ちた音に、二人の視線は俺に向けられた。 「ヒナ、先生…っ」 「…ぁ……」 いたたまれなくなり、俺は踵を返して走り出した。 「ヒナ先生っ!!」
/177ページ

最初のコメントを投稿しよう!

528人が本棚に入れています
本棚に追加