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中庭、体育館、特別教室…校内のあらゆる場所を見てみるが、神楽の姿は無い。
残るは…屋上か。
屋上は休み時間以外立ち入り禁止で、ドアには施錠してある。
まさか、な…。そう思いながらも、屋上へ続く階段を上っていく。
………が、その『まさか』が現実にあったのだ。
「嘘だろぉ…」
俺は思わず呟いた。
施錠してあるはずのドアは開いていて、日当たりのいい屋上には、一つの人影。
気持ち良さそうに寝ている彼こそ、神楽 羚真だ。
「一体…どうやって…」
彼に近付く。至近距離にも関わらず、彼は全く起きる気配がない。
よくもまぁ…授業中なのに爆睡しちゃって…。
屈んで彼の顔をジッと見てみる。
睫毛長いし、こういう奴にしては髪も染めてない漆黒。寝顔なのに、様になるくらいカッコいい。
そういえば…こいつのこと、あんまりマジマジ見たことなかったな。
あの山科先生の授業はサボるのに、俺の授業には必ず出席してくれていた。
噂に聞くほど悪い奴じゃないんじゃ…って、個人的には思ってたんだ。
………待て、いつまで男の寝顔なんて見てるんだ俺は!!
「顔に穴開いちゃいそうですね」
………えっ!!?
寝ている筈の神楽の唇がニヤリと笑う。
フッと神楽の瞼が上がり、俺とバッチリ目が合った。
―ドキン…ッ!!
俺の心臓が激しく高鳴る。
何…男相手にトキめいたんだ!!?
「お、おまっ、いつから…っ!?」
「こんな近くで熱い視線注がれれば起きますよ。そんなに俺に見惚れてたんですか?ヒナ先生」
「見惚ッ…バカ!!何余裕かましてんだ、早く授業戻れよ!!」
「冷たいなぁ。せっかくゆっくり話せるいい機会なのに」
「お前なぁ…ぅわッ!?」
急に神楽に腕を引かれ、体勢が崩れる。
慌てて掴まれていない方の腕で、前のめりになった身体を支えた。
…と、そこには硬直してしまうくらいの距離に、神楽の顔があった。
「目覚めのキスくらい、してくれてもよかったのに」
そう囁いた神楽の吐息が唇を滑る。途端、全身の血管が一気に沸騰するように身体が熱くなった。
すると、神楽が笑みを深めた。
「そんなに赤くならなくてもいいじゃないですか。期待しちゃいますよ?」
俺は頭に血が上り、気付いた時には無意識に神楽の腕を振りほどいて立ち上がっていた。
「お…大人をからかうのもいい加減にしろッ!!!!」
キョトンとした表情の神楽。
ようやく身体を起こして、俺を振り返り見る。
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