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むかしむかし、あるところに、小さな男の子とおかあさんが二人きりで暮らしていました。
今日は、五月五日のこどもの日で、家にカブトをかざったり、こいのぼりをあげたりと、世間はこどもの日を楽しんでいました。
だけど、男の子の家には、カブトもこいのぼりもありません。
数日前、男の子は、お仕事から帰ってきたおかあさんに聞きました。
「おかあさん、ぼくの家にはカブトはないの? こいのぼりはないの?」
狭い家には、こいのぼりもカブトも飾れるスペースはありません。
おかあさんは男の子の頭を撫でると、困ったような顔をし、
「……ぼうや、ごめんね。うちは貧乏だからカブトもこいのぼりも買うお金がないのよ」
と、悲しそうな声で謝りました。
男の子は、何かものが欲しいというたびに、おかあさんから聞かされるこの言葉に、それ以上は何もいえませんでした。
何より、いつもニコニコしているおかあさんが、この時だけ悲しそうに謝るのを見る事が、男の子にはたまらなかったからです。
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