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「俺に愛されてるふりをして欲しい。」
「は…?」
びゅっと風が吹いて、私のセミロングの髪が風に舞った
風がおさまって、乱れた髪を直そうと、手でとかそうと手を伸ばす。
が、告白の緊張からまだ解放されておらず、加えて今しがた聞こえた、幻聴のような言葉に手が震えて、上手く出来ない
すっと。
腕一本分の距離まで近づいてきていた彼が、ぐちゃぐちゃになっているだろう私の髪をとかした
私が手を伸ばしてきた彼にビクッとなったのはスルーしてくれた。
「俺、由利とやり直したいんだ。」
由利とゆうのは、もっぱら美人と自他共に認める、柊の彼女である。
前に元がつくが
「じゃあ…なんで?」
「一度手放した物を他人がもってると、羨ましがったり、後悔したり、嫉妬したりするだろ?」
共感を求めよと私に眉をつり上げたが、私にはよく分からなかったので首をかしげた
「そうなんだよ!だから、俺が違う奴の者になれば、由利も嫉妬して、俺のところに来てくれるかと……」
無理矢理まとめた気がしたが、私は先ほどよりは理解した頭で思ったのだ。
―彼は私を利用しようとしている。
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