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兄さんは親父が個人で経営しているカフェレストランで働いている。
兄さんの料理の腕にプラスしてあの顔・ルックス、店は少なからず繁盛していると言えた。
「弟さん?」
「おん、貴ちゃん言うねん」
「似てないわね」
嘲るように笑う。
俺のにとって、こんなのでも、まだ【憧れの兄ちゃん】だ。
その人と似てない、と言われるのは最高の屈辱とも言える。
「…外いこか」
兄さんが女の手を引いて外に行く、香水くさい、気持ちの悪い女。
扉の音が閉まると無音だけが響いた。
俺の兄さんをとった女…
「何考えとんねん自分」
そういって器具と材料をだし、店の看板商品(もちろん兄さんのもの)をつくりはじめる。
ブラコンなんて、気色悪い。
わかっていても心の深いところから溢れでる嫉妬心。
そして兄さんへの憧れ。
俺は兄さんの様なパティシエを目指している。
尊敬という気持ちは正しいのかという確認のため。
「まだまだやなー」
「っ」
「クリームはもっと素早く、チョコはもっと優しく」
なんとも曖昧な表現で注意を受ける。
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